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【父性の不確実性】生みの親か、育ての親か

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ふと、大学で聴講した心理学の授業を思い出した。
『父性の不確実性』

子供が生まれた時、母親や母方の両親は父親に向かって「お父さんにそっくりね」と言うらしい。
子供を産んだ張本人である母親と違って、父親は生まれた子供が確実に自分と血がつながっているという確信が持てない。(これが父性の不確実性)
それでも母親や、母方の親戚は自分の子孫である子供を父親にも育ててほしいので、どうにかして父親としての自覚を芽生えさせようとするらしい。

その結果かける言葉が「お父さんにそっくりね」なんだそうだ。

生まれたばかりの子供なんて、顔だちもはっきりしておらず、誰に似ているかなんて分かるはずもない。
それでも「そっくりね」と言われれば父親も安心して子供を養う。だから次の世代でも母方は本能的に「そっくりね」と言う。

さらに、進化心理学では「生まれたばかりの子供は父親に似ている」という学説があるらしい。
これも父性の不確実性を解消するための進化で、子供が父親に似ているほど、父親は自分の子供だと信じることができるので、積極的に養う。
その結果、父親に似る性質の遺伝子が繁栄したのだとか。

面白いなと思った。

血がつながってい子供を育てるのは、抵抗があるものなんだろうか。
自分の遺伝子を持ち、自分に似た子供が一番可愛いのだろうか。
世の中には養子縁組という制度もあるし、生みの親より育ての親という言葉もあるが、こんなことを考えると映画『そして父になる』を思い出す。

『そして父になる』は、幼稚園年長まで育てた息子が実は病院で取り違えられた子供だと言うことが発覚し、取り違えられた2人の子供の親同士で、このまま育てるか、血のつながった子供と交換して育てるかを話し合うというストーリーだ。
主人公を演じる福山雅治(父親役)は、取り違えられていたことが分かった後、「あいつは優しすぎる、意欲がない」など、エリートである自分との違いを強調する。
エリートだからこそ、自分の息子にも同等以上の優秀さを求めてしまうし、自分の子供ならきっと優秀なはずという自信がある様子が伺える。
育てていた子供の親が、自分とは違う、田舎の電気屋を営むオヤジだったというのも影響しているはずだ。
「この親なら、自分が育てても自分ほどエリートにはならないだろう」と思っていそう。

映画は、血のつながった子供を育てたい一方で、5年間育てた子供にも未練がある、という煮え切らない感じで終わる。
また、2組の家庭があまりにも異なるので、血がつながっているかどうかより、どちらの家庭の方が良いかが気になってしまう面もある

色々書いたが、結局、理屈じゃなくて本能的な部分で、自分の遺伝子を残したい、血のつながった子供が一番可愛い、という思いがあるんだろうなあ。

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