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いつまで皇室外交を続けるのか。危うさの中で成立する伝統と平和。

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今回は、西川恵さんの『知られざる皇室外交』を読みながら、皇室について考えた。

右翼に怒られるだろうが、私は小さい頃から天皇を尊敬はしていなかった。
はだしのゲンなどの戦争漫画の影響から、「戦争を起こした人の子孫がなぜ未だに税金で生きてるんだ?」くらいの感覚だった。

最近、ウクライナ政府が昭和天皇をヒトラーやムッソリーニと並べて表現したことに対し日本政府が撤回を求めたが、「一理も二里もあるのでは、、」と思った。
日本国民全員の特性を含む複雑な要因があったので、今頃「昭和天皇に戦争責任がありました」なんて声明を出すことはないと思うが、海外から見れば昭和天皇にも戦争責任があると思われているのは不思議ではない。

平成天皇の活躍

さて、『知られざる皇室外交』では、主に平成天皇の公務について書かれている。
昭和天皇に戦争責任があったかどうかはさておき、1945年時点でまだ11歳だった平成天皇に責任はないだろう。

平成天皇は、まだ皇太子の19歳の時には、昭和天皇の代わりに外遊に出た。
1953年。まだ戦争の記憶が新しく、日本軍の捕虜となり虐待、強制労働させられた欧米人による反日感情も多々ある中での外遊だった。
1971年昭和天皇が訪問して反日感情にさらされたオランダにも、1991年に訪問し、日蘭関係を改善させるきっかけになった。
高齢になってもサイパン、フィリピンなど日本軍に直接の被害を受けた地域に足を運び、長い黙とうをした。
天皇は政治的な発言はできないので、戦争に関して反省しているなどとは言えない。
国籍にかかわらず戦争によって亡くなった全ての人のための慰霊であり、平和を願う行為だ。

任期が終われば解任される首脳と違い、天皇は終身だ。
だからヨーロッパの王族とも家族ぐるみの長い付き合いができる。
先に述べた日蘭関係の改善についても、日本の経済成長が友好化の大きな理由ではあるが、日本の皇室とオランダ王室に世代を超えた交流があったこともオランダ女王、オランダ国民の気持ちを変えた一因かもしれない。

世界最長の歴史を誇る日本皇室

さらに、日本の皇族は令和天皇までで126代続いており、世界的にも稀少な伝統の長さだ。
紀元前660年前に即位した神武天皇のY染色体を繋げてきたことを重視している。
(神武天皇が実在したのかは諸説あるが、世界最長であることは間違いないらしい。)
女性の染色体はXX、男性はXYなので、男性の皇族が男の子を産まないとY染色体はつながらない。
天皇が男兄弟をたくさん産めば、分家ができて皇位継承者は広がるが、終戦後の皇室財産没収で51人も皇室離脱させたので、現時点の皇位継承者は3人しかいない。
平成天皇の父の弟(叔父)、令和天皇の弟、令和天皇の弟の息子の3人だ。

例えばイギリス王室だと、女系天皇も認めているので王位継承権者は5000人を超えるという。
そもそも昔からヨーロッパでは王室同士の国際結婚があったので、イギリス王女が他国に嫁いだことで、外国人がイギリスの王位継承権を持っているなんてことさえある。
ここまで増えると有難みが薄れるように感じるものではないだろうか。

皇室外交を今後も続けるのか?

いかに日本が「皇室は政治とは無関係です」と言おうと、天皇の外国訪問それ自体に政治的意味は生じる。
天皇の立ち振る舞いや会話によって、各国首脳や王室の日本に対するイメージは変わるだろう。
『知られざる皇室外交』で書かれているように、平成天皇は日本の外交に良い影響を与えた。

しかし私は、そこに不安さえ覚えた。
子は親の背中を見て育つとはいえ、必ずしも日本思いの良い人になるとは限らない。
スマホでSNSやネットに触れて、教育されている内容とは真逆の思想を持つことだってあるかもしれない。
それでも各国の首脳や王族は天皇に会いに来るし、日本人の王として見る。

現在の皇位継承者は3人。
年齢的に考えてこれ以上子供が増えるとも思えないので、令和天皇が長生きすれば次期継承者は現在15歳の悠仁親王だろう。

でもその次は?
悠仁親王の妻になる人が男の子を生まなければ、また女系天皇を認めるかどうかという問題になる。
その確率は十分に高い。

女性天皇を認めれば女系天皇を認めることにつながり、初代天皇とのY染色体の繋がりは途絶えて「世界的に稀少な王族」としての歴史は終わる。
高齢になっても男の子が生まれなかった天皇・皇后に、男の子が生まれるまで不妊治療をしたり側室をつけたりするのも常識的に問題があるだろう。
戦後に一度皇室離脱した人を今頃皇族に戻すのも、初代天皇とのY染色体の繋がりは保たれるが応じる人がいるかどうか。

もし次に自然な方法で男の子が生まれなければ、皇室そのものを終わらせることも選択肢に入れてはどうだろうか。
天皇の妻となる人は、男の子を産まなければならないプレッシャーから解放される。
生まれてくる子供は、自由に生きることができる。
国民は、不確実な「次に即位する天皇」に外交を託さなくても良くなる。

日本らしく神秘的で素敵な歴史だし、平成天皇の活躍は素晴らしかったが、本当に未来永劫続けなければならないのだろうか?

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