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AIは結局どこまでできているのか

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さて、今回は噂の人工知能(AI)について
松尾豊さんの『人工知能は人間を超えるか』をベースに所感を入れつつお話ししていきます

最近は、人間の知能を超えたAIが生まれる、人間の仕事がAIに奪われる、といたるところで騒がれていますね
でも結論から言いますと、
人工知能はまだできていません

じゃあ巷のAI搭載家電!みたいなものは何かと言うと、「人間の知的な活動を模倣したプログラムを搭載したもの」と考えて差し支えなさそうです
つまり、人間のように考える人工知能はまだできていませんが、人間っぽい判断ができるプログラムなら実用化されているというわけです
例えばエアコンの「30分後の体感温度を予測した温度設定」など。思考して予測しているように見えますが、実際は直射日光が当たっていたら、現時点の表面温度が何度以上だったら、というルールベースで細かく設定されているだけでしょう

そもそもAIってなんだよって話から行きますと、元々は「人間の脳は神経細胞を行き来する電子信号からできているんだから、電子回路で人間の脳を再現できるんじゃない?」というところから来ています。
そう言われると雰囲気的には実現できそうですよね。
では実際、「AI」は現状どこまでできているんでしょうか

  1. ゲームが強いAI
  2. 知識を得て対話できそうなAI
  3. 機械学習
  4. ディープラーニング

この本では、AIは以下の4つのレベルに分けられ、4度のAIブームがあったとされています
レベル1は前述の「考えてるっぽくなる」家電のようなケース

第1次AIブーム

第1次AIブームでは、コンピュータに様々なパターンを考えさせることで、チェスなどのゲームでは人間より強くすることができました。
しかし、ゲームだけで現実世界の複雑な問題に対処することはできません。
トイ・プロブレム(おもちゃの問題)だけで、人間の知能をコンピュータで再現することは不可能だと思われたのです。

第2次AIブーム

レベル2のAIに知識を追加すれば現実世界でも使えるようなAIができるのではないかと考えられました。
例えばchatで医療診断をする"イライザ"に「頭が痛い」と言えば「どうして頭が痛いのですか」と聞き返してくれます。
主語と述語を見ながらルール通りに聞き返しているだけですが、ユーザーが「2日酔い」と答えれば二日酔いによる頭痛に効く薬を紹介することも可能です。

こんな感じで質問文の中に入っているワードに反応してAIが持つデータから適切な回答を導くことはできます。
実際に2011年、ibmワトソンはクイズ番組のチャンピオンを超えました。
しかし、質問の意図を理解しているわけではなく、質問文に入っていたワードに一番関係がありそうなものを回答として選んでいるだけです。

コンピュータの記憶力は明らかに人間を上回っているので、専門家の持つ知識をコンピュータに記憶させたエキスパートシステムを作れば役に立つ部分はあるでしょう。
しかし、あくまで人間とコンピュータが「対話してる風」になっているだけで、人間の複雑な質問をコンピュータが理解しているわけではありません。

そこで、人間が持つ一般常識を全てAIに覚えさせれば人間と同じように言葉を理解し、対話できるAIが生まれるのではないかと考えられました。
人間の知識を表現する方法としては図のような「意味ネットワーク」があります。
動物には哺乳類や魚類、鳥類などがいて、哺乳類にはクジラや人間がいて、人間には2本の腕と2本の足がある。
というように、全ての概念をデータとして覚えさせるのです。

人間の赤ちゃんでもやってるんだから簡単だろ、と思われるかもしれませんが・・・これが普通に難しい。
赤ちゃんには実際に見せて、「これが手」「これが足」「鳥には手の代わりに翼があるね」とやれば良いのですが、コンピュータに教えるときは何から何まで定義しないといけないのです。
意味ネットワークなんて意識しなくても人間が自然とやっていることが、コンピュータにはできない。

意味ネットワークを全て書き出すという試みは実際にcycというプロジェクトとして始まりましたが、30年以上経ってもまだ終わっていないそうです。
人間の持つ一般知識は、単純なようで膨大なんですね。
こうして第2次AIブームも限界を迎えました。インプットした知識の範囲内では有用ですが、全ての例外を含めた知識をインプットさせるのは不可能だったのです。

第3次AIブーム

インターネットの流通に伴って、ビッグデータが生まれました。
第2次AIブームまではAIに与える知識は人間が手作業で作っていましたが、第3次ブームではネット上にある大量のデータを利用することができました。
機械学習とはそれらのデータから学習し、データの分類方法を学ばせることです。
機械学習には教師あり学習と教師なし学習があります

教師あり学習:

入力と出力(正しい分け方)がセットになっている訓練データで学習させる方法

教師なし学習:

入力のみで、データの関連度のパターンを見出して分類させる方法

これらの方法でAIを学習させ、新しいデータを与えた時に正しく分類できるようにします。
例えば、猫の画像データで教師あり学習をさせたAIに犬のデータを見せて猫であるかどうかを判断させる。
これを猫だけでなく狐、豚、牛でも繰り返せば、どんな画像でも写っているものが何か判断できるAIが誕生するというわけです。

しかし、機械学習にも課題がありました。
「毛とヒゲと耳がついているものが猫だ」と学習させると、毛のないスフィンクスのような猫は猫だと判断されなくなってしまいます。

これが「特徴量設計」の問題。
特徴量とは「データのどこに着目するか」ということ。
どのような特徴を猫の特徴として定義するかでAIの良し悪しが決まってしまうので、変な特徴量で学習させてしまうと、”風が吹いたら桶屋が儲かる”レベルの予測をするAIになってしまいます。

機械学習を用いれば未知のデータでも学習したデータから判断を下すことができます。
人間が文字を学習するのに生まれてから数年かかりますが、一度理解すればスラスラ読めるようになるのと同じです。
ただ、結局人間がどのデータを用いて学習させるかが問題になります。

第4次AIブーム

機械学習の特徴量設計問題を解決したのがディープラーニングです。
ディープラーニングでは、特徴量設計をAIが行います。
つまり、与えられたデータの中から相関を見出し、似ているもの同士を同じ概念として扱うのです。
最初から「猫とは毛とヒゲと耳があるやつ」と教えるのではなく、画像を大量に解析しているうちに、「画像のこの辺りに細長い線が入っている画像が多いな、これは全部同じグループなんじゃないか?」とコンピュータに気づかせて、後から「それは猫だよ」と教えてあげる。
これによりコンピュータは人間と同じように概念的・典型的な猫のイメージを獲得するので、後はそれと似たものを全て猫だと判定すれば良いわけです。

さらに言うと、ディープラーニングで作られた概念の特徴量が人間が把握している特徴量と同じである必要もありません。
人間は「大きい」「青い」「海にいる」をクジラの特徴だと思っているかもしれませんが、AIが「15~25ヘルツの周波数で鳴く」を特徴として分類していても結果があっていればそれで良いのです。
人間と同じような思考ができるコンピュータを作ろうとしたのに、コンピュータは人間とは全く違う視点で概念を作り出す可能性があるというのは面白いですね。

AIは人間を超えるのか?

さて、こうしてAIは現在に至るわけですが、結局AIは人間を超えるんでしょうか?
AIが自分より賢いAIを作った時、加速度的に技術が進展するという「シンギュラリティ」が起きるとか、AIが欲望を持って人間が支配するようになるとか、色々言われていますが、まあ、厳しいでしょうね。
AIはようやくデータを分類して概念化させられるようになったところ。
様々な例外が起こる現実世界でAIが能動的に判断し行動できるようになるのは、おそらくだいぶ先の話。

松尾豊さんの『人工知能は人間は超えるか』は、専門的な話が入りつつもとてもわかりやすかったです。
結論的にはAIが人間を超えるのは相当難しいという話でしたが、人工知能をどの分野でどのように使うべきかという議論や、使用する上でのルールは今のうちに決めておいたほうが後から問題にならないでしょう。
そのためにも、非専門家も含めた多くの人がAIを理解し、「仕事を奪われる」と怯えるのではなくてAIをどう活用するかを前向きに考える必要があるのではないかと思ったハヤブサでした。

ハヤブサ ナナミ

一橋大学商学部卒業後、外資系IT企業に就職。学生時代の専攻は財務諸表分析。学外では、就活用LINEchatbotを開発。文系卒SEとして「何を作るべきか」と「どう作るべきか」の両方が分かるようになりたい。英語はまあまあ中国語はもう少し。ちょくちょく海外独り旅。
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